小川一水 時砂の王

本日1日人間ドック入り。待ち時間が長く1冊ゆっくりと堪能することができました。

時砂の王 (ハヤカワ文庫 JA オ 6-7)
時砂の王 (ハヤカワ文庫 JA オ 6-7)小川 一水

早川書房 2007-10
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おすすめ平均 star
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あらすじ

西暦248年,不気味な物の怪に襲われた邪馬台国の女王・卑弥呼を救った”使いの王”は,彼女の想像を絶する物語を語る。2300年後の未来において,謎の増殖型先頭機械群により地球は壊滅,さらに人類の完全殲滅を狙う機械群を追って,彼ら人型人工知性体たちは絶望的な時間遡行戦を開始した。

感想

ひさしぶりの小川一水,しっかりと堪能させていただきました。最近は本屋のチェックが甘くなっていたようで,この本のことはまったく気がついていませんでした。たまたま子どものクリスマスプレゼントをamazonで探してたら発見し,ついでに買っちまいました。
そして内容ですが,素晴らしいの一言に尽きます。これだけのテーマをこのページ数*1にまとめ,その上しっかりと読ませる腕は一段と進化しているといってもよいのではないでしょうか。う〜ん,小川一水恐るべし。
読んでいる途中で,光瀬龍の「百億の昼と千億の夜」を思い出していました。時間軸は逆方向ですが,壮大な時を越えて強大な敵に立ち向かう姿に何か物語のビジョンが重なるのを感じていました。そのせいでしょうか,このエンディングはいろいろな意味で予想外でした。
このような形である意味ハッピーエンドで終わることは予想もしていませんでした。漠然とOの戦いは最後まで終わらないのではと考えていました。何か当然そうなるべきだと信じて読み進めていたような気がします。そのため,ラストは何か違和感をさえ感じていました。
しかし,読後感を味わっているうちに「そうか,こういうラストもあるんだ!」と,眼からうろこがこぼれたって言うんでしょうか,そんな気分を味わえるようになりました。オリジナルのOの戦いは終わっても,他のものたちの戦いはまだ続くのですから。

*1:本文だけで270頁