山本弘 闇が落ちる前に、もう一度

お盆休み明けからまた本読みペースが落ちてましたが,時間つぶしに入った本屋で偶然見つけた短編集をリハビリ替りに読んでみました。

闇が落ちる前に、もう一度 (角川文庫 や 40-3)闇が落ちる前に、もう一度 (角川文庫 や 40-3)
山本 弘

角川書店 2007-08
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あらすじ

この世界はどうして生まれたのか? 宇宙の果てはどうなっているのか? ”本当の宇宙の姿”を追い求め,在る独創的な理論に到達した宇宙物理学者。彼はこの理論の誤りを証明するためにある実験を始めたのだが・・・

感想

最近はSF系の出版社より角川や新潮など一般文学的な出版社からが増えている「と学会」会長の新刊です。前回の「まだ見ぬ冬の悲しみも」とはうって変わってシリアスな短編をそろえています。解説にも書かれていますが,ホラーとSFの境界っぽい作品がメインです。
宇宙や世界の成り立ちという壮大なテーマとラブストーリィを両立させた「闇が落ちる前に、もう一度」や「審判の日」。日常の中に不条理なものを忍び込ませた「屋上にいるもの」「夜の顔」。そして1作だけ雰囲気の違う人工知能の心を描いた「時分割の地獄」。どれもどこにでもある日常から入り,いつの間にか非日常の世界に迷い込んでいく秀作です。これを読んでいて子どものころに読んだ,福島正実氏などの日本SFの初期のジュブナイルSFをなんとなく思い出しました。