林譲治 ウロボロスの波動


ウロボロスの波動
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あらすじ

西暦2100年、1機のX線観測衛星が発見したブラックホール・カーリー。それがすべての始まりだった-。火星、エウロパ、チタニア、変貌する太陽系社会を背景に、星ぼしと人間たちのドラマを活写する連作短篇集。

感想

西暦2123年より2171年までの四十数年に亘るブラックホールと人類との攻防を,一人の女性科学者を通して描いたハードSFです。この作品の秀逸な点はまず,ハードな文体によるかっちりとした構成で,人物の個性に頼りきりとなるのではなく,しっかりと全体像を描いている点です。次にAADDという独立した組織を創り出すことによって,政治劇やサスペンスなどの要素を取り入れている点です。この組織と太陽系政府との確執を描くことにより,より深い人間ドラマとして捉えることもできます。
この作者はハードな内容を扱うわりにはあっさりとした印象を持っていたのですが,この作品はたっぷりと中身の詰まった物に仕上がってると思います。どちらかというとバクスタなどの海外SFの匂いを感じさせてくれますね。
続編である「ストリンガーの沈黙」もまだ手をつけれていないのですが,読み込める時間が取れるのを楽しみにしている今日この頃です。