飛浩隆 象られた力

象られた力
象られた力
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飛 浩隆
早川書房 (2004/09/08)

あらすじ

異星世界を舞台に”かたち”と”ちから”の相克を描いた表題作,双子の天才ピアニストを巡る生と死の二重奏の物語「デュオ」ほか,初期中篇の完全改稿版全4篇

感想

美しい物語です。とにかく内容も文体も美しいとしか表現できません。今まで手を出しにくく,恥ずかしながらこの作者をちゃんと読んだのはこれが初めてになります。中篇集ということでまだ読みやすいかなと。
特に表題作の「象られた力」は圧巻でした。それぞれの登場人物からの描写が中心でストーリィが進んでいく中,いつの間にか膨大な量の情報が与えられ,どんどん引き込まれていくという感じです。そして浮かんでくるイメージは「光」。流れていく様々な絵画という印象です。
あと「呪界のほとり」,奇妙なシチュエーションで最後までよく分からないのですが,展開の早さにいつの間にやら引き込まれエンディングではお約束とは思いながら,続編を期待するという次第です。
これで,今まで躊躇していた「グラン・ヴァカンス」も読む踏ん切りがつきそうです。