小川一水 老ヴォールの惑星

老ヴォールの惑星
老ヴォールの惑星
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小川 一水
早川書房 (2005/08/09)
売り上げランキング: 3,585

あらすじ

小川一水初の作品集です。4編のこれぞSFてな感じの中編から成っています。いずれも外部の環境と,環境と相互作用する主体をテーマにしたものとなっています。

感想

正統派SFの作品集という感じです。不思議なのは4編ともかなりハードSF的な内容を扱っているのですが,すんなりと読むことができます。ストレートに人物を骨太に描いており,素直に感情移入して物語に没入していくことができるからかな。予想もつかない展開で一気に最後まで読ませる筆力はさすがです。
この中の「老ヴォールの惑星」と「幸せになる箱庭」は以前にSFマガジンに掲載されたときに読んでいたのですが,読み返してみてもやっぱりおもしろい。特に「老ヴォールの惑星」は異星人の側からのファーストコンタクトを描くという一風変わった筋立てで,それもラストシーンまでそのことを感じさせないというどんでん返しまで用意してくれています。
また残りの「ギャルナフカの迷宮」「漂った男」は初めてでしたが,どちらも読み終わった直後にもう一度も見直したいと強く思わせる作品でした。どちらもとんでもない状況下に追いやられた人々が希望を捨てずに最後にはハッピーエンド,とこう文章にしてしまうとどこにでも転がっていそうな物語と思えますが,そうはいきません。
この作者の作品は結構長いものが多い中でエッセンスが凝縮されたこの中編集はぜひぜひぜひお薦めです。本屋で見つけたらとりあえず手にとって見てください。