谷甲州 空中雷撃−覇者の戦塵1943

長らく開店休業状態が続いておりました(私の夏ばてが原因です)が,なんとか読書量も徐々に回復し,再開のめどが立ってまいりました。この間ほとんど読めてはいないのですが,本屋には少しずつ通い,またもや未読の書籍が着実に私の領域を圧迫してきています。 

空中雷撃―覇者の戦塵1943 (C・Novels 41-36)
空中雷撃―覇者の戦塵1943 (C・Novels 41-36)甲州

おすすめ平均
stars著者の本領を発揮した後方の戦い

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あらすじ

海軍技術研究所の深町中佐は,電子信管を内蔵する敵の高角砲弾を鹵獲した。その対策に奔走するうち,長射程噴進爆弾<丸大兵器>の開発現場に行きつく。一方,敵信の傍受を行う大和田通信隊では,ハワイ諸島の敵海軍に不審な動きを探知していた。

感想

久しぶりの覇者の戦塵です。作者がもう忘れてしまっているのかと思いました。あとがきによると二年五ヶ月ぶりの新刊です。今回のメインはシリーズを通して重要な役割を果たしている深町中佐と,通信隊の予備中尉です。物語的には前作の「電子兵器奪取」の続きという形で始まっているので,最初は前作を思い出しながらということになります(まあ,忘れ去っていても何とかなりますけど)。
そしてなんといってもこのシリーズの真骨頂,”技術者から見た戦史”がこれでもかと畳み掛けます。今作では戦闘場面はまったくありません。深町中佐編では,技術論や上司,他部署との腹の探りあい。大和田通信隊編では,暗号解読論や通信傍受の解析。一応このシリーズも架空戦記ものになるのでしょうが,こうして改めてみるととことん地味!
それでもやっぱり面白いです。技術者や情報士官たちの後方での熾烈なる戦い。戦闘場面など登場しなくても,しっかりと手に汗を握らせていただきました。特に通信傍受の時間とも戦いながら,解析を進めていく場面など最高です。
一応作者の希望としては,次作は年内に出したいということなんで,ぜひがんばってもらって続きを早く読ませていただきたいものです。