冲方丁 スプライトシュピーゲルII

久しぶりに帰ってまいりました。

スプライトシュピーゲル 2 (2) (富士見ファンタジア文庫 136-9)スプライトシュピーゲル 2 (2) (富士見ファンタジア文庫 136-9)
冲方

富士見書房 2007-07
売り上げランキング : 60992
おすすめ平均

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あらすじ

近未来都市ウィーン−ミリオポリスに建造された超巨大タワー,<ヴイェナ・タワー>。それは,人の命を削って創られたものだった。その横をかすめて,火の玉が墜ちる。落ちた星−ロシアの原子炉衛星アンタレスは,災厄の始まりでしかなかった。

感想

最近興味がちょっとよそへ出かけているのと,帰り道の本屋がつぶれてしまったので本屋に行く頻度が落ち気味です。そのためかどうかはわかりませんが,この本出版されているのに気がついていませんでした。たまたま新刊コーナーでスプライトの3巻を見つけあわてて探してみたら2巻はとっくに出版されていました。これにはちょっと焦りましたね。
さて内容ですが,相変わらずハードです。今回は長編ということで,三人娘のキャラクターメインというよりはMSSという組織全体がメインのお話です。冲方氏の魅力は個性豊かな登場人物もさることながら,やはりこういういろいろな要素が絡み合いながらひとつの結末へと収斂していく物語自身の力ですね。一時でも眼を離してしまうのが惜しいような気持ちで読みきってしまいました。オイレンの方の2巻は先に読んでいたのですが,同じ事件を同じように追っていながら,両方ともしっかりと読ませる筆力はさすがです。(なんかこの人の感想には毎回書いているような気がしますが)二つの物語が交差し,また離れていく。いろいろな伏線が見え隠れしながらこの先の展開がひじょう〜に楽しみです。

西原理恵子 毎日かあさん4出戻り編

毎日かあさん4 出戻り編毎日かあさん4 出戻り編
西原理恵子

毎日新聞社 2007-07-20
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おすすめ平均

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感想

数年前に友人から薦められてこの作家を知りました。
気軽に読めてシュールな面や時に鋭い批判など楽しんで本屋さんの店先や,ネットで愛読をしてきました。
 
今回はじめて単行本を購入。
ふと手に取った店先で鴨ちゃんのことを書いているのを読んだからです。
いつもは大笑いして流すか,その後ちょっと考えさせられるかなんですが今回は立ち読みで涙が・・・ 危なかったです。
 

田中芳樹 水妖日にご用心〜薬師寺涼子の怪奇事件簿

最近田中氏の著作に触れることのできる数少ないシリーズ,前作のこともありちょっぴし不安になりながら読み始めてみました。

水妖日にご用心 (ノン・ノベル 840 薬師寺涼子の怪奇事件簿)水妖日にご用心 (ノン・ノベル 840 薬師寺涼子の怪奇事件簿)
田中 芳樹

祥伝社 2007-12
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あらすじ

南アジア某国の王子様が来日した。ハンサムでスポーツマン,資産はじつに三兆ドル! 日本中の女性が大騒ぎする中,巨大テーマパークの貸し切り権を王子に譲った薬師寺涼子警視。そこで惨劇は起こった。人気キャラクター半漁姫に扮した美女に王子様が襲われたのだ。テロリストの動機は王位をめぐる暗闘か,膨大な地下資源にからむ争いか,それとも復讐か。雷鳴とどろき,豪雨が東京を水没させる中,警視庁の破壊美神・涼子が暗殺者を追う!

感想

この作者にしては刊行ペースの速い怪奇事件簿シリーズです。なんというか,まあ今回は気楽に楽しんで読むことができました。お涼さんが心置きなく大活躍。泉田さんも振り回されながらも,そこそこ活躍。しっかりお涼さんを助けてます。事件に関しても二転三転,十分楽しませてもらいました。難を言えばクライマックスシーンがあまりにもあっけなかったてことでしょうか。もう少しお涼様や泉田さんの活劇があると期待していたのですが,あの二人が出てきてあっさり退治してしまうとちょっと拍子抜け。あまりにもできすぎだろうって感じがしました。間抜けな政治家のパロディはいつも楽しんで読んでますが,その部分にページをここまで割くのならもっとクライマックスシーン盛り上げてほしかったなぁ。

小川一水 時砂の王

本日1日人間ドック入り。待ち時間が長く1冊ゆっくりと堪能することができました。

時砂の王 (ハヤカワ文庫 JA オ 6-7)
時砂の王 (ハヤカワ文庫 JA オ 6-7)小川 一水

早川書房 2007-10
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おすすめ平均 star
star価値あり。
star外伝、ないしはスピンアウト希望
star時のかなたへ、退却〜!

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あらすじ

西暦248年,不気味な物の怪に襲われた邪馬台国の女王・卑弥呼を救った”使いの王”は,彼女の想像を絶する物語を語る。2300年後の未来において,謎の増殖型先頭機械群により地球は壊滅,さらに人類の完全殲滅を狙う機械群を追って,彼ら人型人工知性体たちは絶望的な時間遡行戦を開始した。

感想

ひさしぶりの小川一水,しっかりと堪能させていただきました。最近は本屋のチェックが甘くなっていたようで,この本のことはまったく気がついていませんでした。たまたま子どものクリスマスプレゼントをamazonで探してたら発見し,ついでに買っちまいました。
そして内容ですが,素晴らしいの一言に尽きます。これだけのテーマをこのページ数*1にまとめ,その上しっかりと読ませる腕は一段と進化しているといってもよいのではないでしょうか。う〜ん,小川一水恐るべし。
読んでいる途中で,光瀬龍の「百億の昼と千億の夜」を思い出していました。時間軸は逆方向ですが,壮大な時を越えて強大な敵に立ち向かう姿に何か物語のビジョンが重なるのを感じていました。そのせいでしょうか,このエンディングはいろいろな意味で予想外でした。

*1:本文だけで270頁

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山本弘 MM9

読書の秋ももう終わりとなったようですが,こちらはこれからが本格的なシーズンです(^.^)

MM9MM9
山本 弘

東京創元社 2007-12
売り上げランキング : 894
おすすめ平均

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あらすじ

地震,台風などと同じく自然災害の一種として「怪獣災害」が存在する現代。有数の怪獣大国である日本では,怪獣対策のスペシャリスト集団「気象庁特異生物対策部」,略して「気特対」が日夜を問わず日本の防衛に駆け回っていた。

感想

のっけから微妙な違和感を感じさせながら,一切の説明もなくシリアスなお話が進んでいきます。この微妙な違和感ってのが(誰でもすぐに気づくと思うんですが)現実の自然災害を「怪獣」に置き換えてる点からきております。「怪獣6号の襲来」ってのが何の説明もなくさも当たり前に語られていくとこなんぞ,ちょっと慣れるまで間がありました。
ところがところが最終話では,そいつがこっちの世界にいつの間にやら近づいてきて,それどころかしっかりと現実の世界にもリンクできるようになっていたとは・・・驚きの一言です。
内容的にはかなりハードな説明や理論などもぶち込んではありますが,作者お得意の日常の出来事を丹念に描いていくことから,非常に読みやすいものとなっています。ごまかされたような気分になりながら本当にあるのではなんて思ってしまうのはしっかり「トンデモ」してますね。
ところで第3話で登場の「映子さん」,なんとなくもう一度登場の気配を感じていたのですが,ゲスト出演でしたね。最終話ラスボス登場のあたりでは,やっぱり再登場か! っって思ったんですがね。

山田正紀 ゴースト

何かに惹かれるようにいつの間にかこの本を持ってレジに並んでいました。

ゴースト (講談社ノベルス ヤE- 8 創造士・俎凄一郎 第1部)
ゴースト (講談社ノベルス ヤE- 8 創造士・俎凄一郎 第1部)山田 正紀


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あらすじ

霧雨そぼ降る深夜,一方通行の道路で,霊柩車が消えるという。ケーキ・バイキングのさなかに毒殺された女,狭いビルの間にはさまれたまま死亡した少女,炎上する車に飛び込んだ男・・・。
都市伝説と異様な事件の多い蒼馬市の悪夢に,十年前に少年を轢き殺した男が事故の真相を追う中で搦めとられていく。

感想

なんといえばよいのでしょうか。最後まで読み通しても訳がわかりません。でも面白く引き込まれてしまいました。この辺がやはり山田正紀という作家のすごさでしょうか。
物語は何か夢の中の話のように進んでいきます。最初のメインの男から何を言っているのかよくわかりません。そのまま次の章では登場人物も状況もまったく違うものとなります。こんな感じで3つのまったく関係のないような出来事が夢か現実かあいまいなまま進んでいきます。それがいつの間にかひとつに収束されていくのですが,そのラストがなんとも・・・? 
そのうえタイトルにある「創造士・俎凄一郎」なる人物はまったく登場しません。会話の中で3度ほど名前が見られるだけで,どのような人物かほとんど謎です。そのうえ「創造士」なるものが何のことなのかはまったく触れられていません。
第1部となっているのですから今後も続編が書かれるのでしょうから,そちらを期待してみましょう。

鯨統一郎 浦島太郎の真相

「なみだ学習塾」を読んだ勢いで,近くにあったこの本をもう一度読んでみました。

浦島太郎の真相 恐ろしい八つの昔話 (カッパ・ノベルス)浦島太郎の真相 恐ろしい八つの昔話 (カッパ・ノベルス)
鯨 統一郎

光文社 2007-05-19
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あらすじ

ここは「森へ抜ける道」という名の日本酒バー。今日も今日とて常連の僕と山内,マスターの「ヤクドシトリオ」は,益体もない話に花を咲かせている。その中で,どうしても謎の解けない事件のことを話すと,同じく常連客の美人大学院生・桜川東子さんは,何故か日本のお伽噺になぞらえて鮮やかな推理を展開する。

感想

さて,こいつは鯨氏お得意の新解釈ものです。これは連作物の第二弾で,前作は「九つの殺人メルヘン」でこれは西洋の童話をもとにした作品でした。舞台はとあるバーでの一夜のお話。安楽椅子探偵ものとなるのでしょうが,事件の内容はメインではありません。また,なぞらえられるお伽噺の新解釈もメインではありません。各お話のメインはなんといっても,「ヤクドシトリオ」の繰り広げるマニアックな昭和ねたです。こいつを披露したいから,それが伏線となる昔話ねたを思いつき,そこから事件を考え出したのではと思えるほど,前半のオタクねたはヒートアップします。
それにしてもこの作者は,次から次へとよくねたを思いつきますね。最初ほどのインパクトはさすがにないですが,それでも読むたびに新鮮さを感じさせるアイディアはさすがだと思います。